実践経営術エッセンシャル/第16回「付加価値とは何か」

今回のコラムは、イノベーションの実現に欠かせない要素として「付加価値」を取り上げます。

イノベーションとは、新しい「何か」を創ることです。商品・サービスやビジネスモデル、体制や仕組みなどを新たに生み出すこと、これが本稿におけるイノベーションです。 

イノベーションの成否は、成果の有無で判断します。市場を超えて、社会全般に普及した商品・サービスはイノベーションの成功といえるでしょう。一方で、実施したところ不発に終わった取組みはイノベーションの失敗になります。成果の伴わない取組みはアイデアや思いつきであり、イノベーションとは区別すべきものです。

イノベーションを成功に導くため、欠かせないポイントが付加価値と差別化です。今回のコラムでは、付加価値を取り上げます。

 【今回のテーマは付加価値です】

〇付加価値とは何か

付加価値とは、企業が商品やサービスの生産によって生み出した価値です。インプットとアウトプット、すなわち投入した素材と生産した商品・サービスの両者に大きな価値の差が生じているほど、付加価値が高いと表現できます。

付加価値は、消費者や顧客に認めてもらうことではじめて成立します。ここから、付加価値はお客様がお金を支払う理由ともいえるでしょう。消費者・顧客が商品やサービスに高い付加価値を認めているのであれば、高い価格を設定したとしても取引は成立します。逆に、お客様が評価しない事業や、世の中に必要とされていない事業は売上につながりません。そこで、付加価値を極大化することが企業の課題になります。

〇3+1者の付加価値

では、高い付加価値を生むためにはどうすれば良いでしょうか。ビジネスを考える時の最も単純かつ重要な問いかけは、「このビジネスにはどれほどの価値があるのか」ということです。

ビジネスの価値を考える際は、誰に対する価値なのか、という切り口で考えてみましょう。付加価値を誰に提供するかを考えると、はじめにお客様が思いつくかもしれません。しかし、お客様だけではなく、売る側にもメリットがなければビジネスの継続は困難です。

日本には、「三方良し」という近江商人の心得があります。三方とは売り手、買い手、世間の3者を意味します。三方良しとは、3者すべてに満足を与えるビジネスが望ましいとする先達の教えです。

当社では、3+1者の視点による付加価値の検討をお勧めしています。はじめの3者は売り手、買い手、使い手の3者を指します。残る1者が周囲です。3+1、合わせて4者の視点から付加価値を考えることで、ビジネスの存在意義が明確になります。以下で、4者それぞれを確認しましょう。

 【付加価値を考える4つの視点】

・売り手の視点

売り手とは、商品・サービスを提供する主体です。売り手は、素材に対して経営資源を投入することにより価値を生み出します。売り手にとっての価値を尋ねると、多くの方が利益と答えます。ただし、ほかにもブランド力、集客力、顧客満足度などは売り手にとっての価値となります。

特に新規事業では、企業や既存事業に対してどれほどの価値が提供できるかを考えなければなりません。新しい商品やサービスそのものが売上に貢献しなくても、企業や既存事業の発展に貢献するケースは数多くあります。

・買い手と使い手の視点

買い手とは、商品・サービスに対価を支払う主体です。企業が提示する商品・サービスへ価格以上の価値を認めた時に、対価を支払うことで取引が実現します。

注目すべき点は、買い手と使い手を分けていることです。使い手とは、購入した商品やサービスの利用者を指します。例として、子供向けのおもちゃを考えてみましょう。この場合、買う人は親ですが、使う人は子供です。このように、多くの商品・サービスは買う人と使う人が異なるのです。

買い手と使い手を分ける理由は、両者の価値観が違うためです。上述のおもちゃであれば、親と子供の価値観は違います。親の価値観であれば、子供が喜ぶこと、安全であること、などに価値を感じます。一方、子供の価値観であれば、自分が楽しめること、友達と遊べること、などに価値を感じます。

以上から、売る人、すなわち商品・サービスを提供する企業は、買い手と使い手の価値観をどちらも尊重しなければなりません。買い手と使い手にとっての価値とは、消費者や顧客にどのようなメリットがあるのか、ということです。どちらの価値観も満たしつつ、実現の程度が高いほど付加価値は高くなります。

・周囲の視点

周囲とは、世間や社会、地域と同じ意味です。この視点は、売り手の商品・サービスがどれだけ世の中を良くするか、というものです。企業・事業は、社会に支えてもらうことで継続できます。そのため、地域などの周囲にも価値を還元することが望ましいといえます。

たとえば、食堂付きの集合賃貸住宅というケースを考えます。食堂は借り手が割安で利用できますが、一般の利用も可能です。一般にも開放した結果、近隣に住む一人暮らしの高齢者が利用するようになりました。家主にとっては入居率の向上と利益の獲得、借り手にとっては健康管理、近隣の住民にとっては日常の楽しみとして役立っています。このケースでは、3+1の付加価値を高めているといえるでしょう。

ただし、社会への付加価値だけを追求したビジネスは継続が困難です。たしかに、ビジネスに社会の視点を加えることはとても重要です。しかし、社会貢献の結果として収支が悪化し、事業の継続が不可能となれば本末転倒です。したがって、周囲への付加価値は他と区別し、「3+1」と表現しているのです。

〇付加価値を意識したビジネスの検討

3+1の視点、すなわち4つの切り口で付加価値を考えることにより、ビジネスの存在意義がより明確になります。また、事業計画を策定する際も、多様な視点から検討することによりバランスの良い内容になります。

ただし、注意すべき点もあります。それは、3+1の視点をあくまで切り口として考えることです。たしかに、付加価値は多様な視点からの検討が好ましいといえます。しかし、すべてのビジネスが4者すべての価値を必ずしも満たす必要はありません。すべての視点に注意をはらいつつ、どこかひとつの視点に集中するという方法もあり得ます。

企業の内部に所属していると、どうしても自社の付加価値が気付きにくくなります。そのため、客観的なアドバイスを求めることにより事業が進展することもあります。お困りの際は、ぜひ当社をはじめとする支援機関にご相談ください。

「実践経営術」エッセンシャル/第2回「イノベーションとは何か」

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