実践経営術エッセンシャル/第15回「ビジョンの明確化」

第7回から前回のコラムまで、現状分析に関する内容を続けてきました。今回は第6回「経営計画のススメ」に立ち戻り、未来への取組みについて解説します。

「実践経営術」エッセンシャル/第6回 「経営計画のススメ」

【ビジョンと目標の関係】

●計画経営

目標に向かい確実にスパイラルアップしていく経営スタイルが計画経営です。スパイラルアップ、すなわち継続的な改良の好循環を生み出すためには、試行錯誤の仕組みを社内に取り込む必要があります。代表的な試行錯誤の仕組みがPDCAです。当社では、ノウハウ化を重視した仮説検証サイクルを推奨しています。
(仮説検証サイクル=仮説・実行検証・ノウハウ化サイクルの解説はこちら

計画経営に目標設定は欠かせません。最終的なゴールが明確になってこそ、イノベーション(変革)を起こすことができるのです。ゴールが明確かつ感情に訴えるほど、組織の求心力が高まります。

●ビジョンとは何か

ビジョンとは、ビジネスで「いつか行きたいゴール」のことです。この「いつか」は5年後や10年後の場合もあれば、それ以上の場合や定めのない場合もあります。ゴールは端的に分かりやすく示し、具体的な内容は目標の形で別にします。
(目標については以下で別途解説)

前項の「最終的なゴール」とはビジョンを指します。言い換えれば、現状分析で明確になった課題への対応方針ともいえます。

例として、現状分析で課題を導き出した企業のケースを考えます。この企業が、対応方針を「高価格でも高品質・高機能を求めるお客様にシフトする」と定めたとしましょう。対応方針(=ビジョン)を定めることで、以降の行動は高品質・高機能な商品の品ぞろえや販売が中心になります。このように、ビジョンを明確に持つことで行動の一貫性が生まれるのです。

●ビジョンの効用

ビジョンを定めることによる利点は様々です。代表的なメリットを以下にご紹介します。

〇決意が明確になる
ビジョンは「いつか行きたいゴール」です。このゴールを設定するのは経営者であり、経営者が描く将来像ともいえます。言い換えれば、ビジョンは経営者による強い意志の表明なのです。ビジョンを従業員と共有できれば、組織が一体感をもって行動するようになります。

〇強いリーダーシップを発揮できる
従業員が目標に向かって突き進む、一貫性をもった組織とするためには指示系統が明確である必要があります。経営者による事業の将来像が明確なほど、そして従業員が実現可能性を高いと認識できるほど、組織は一体として行動するようになります。

〇対外的な協力を得ることができる
協力企業や投資家、金融機関などの利害関係者(ステイクホルダー)が協力を判断するために、財務指標などの定量的な判断材料だけでは不十分です。定性的、かつ直感的な判断材料としてビジョンが役立ちます。ステイクホルダーがビジョンに共感すれば、積極的な協力も獲得しやすくなります。

〇ブランドを醸成する
ビジョンは、内外に経営者の強い意思を示すものです。ここで明示するビジョンは、社会的な課題の解決を含めた内容が少なくありません。社会的な課題の解決を内容としたビジョンはCSR(企業の社会的責任)を果たしていると受け入れられ、ブランドの醸成に貢献します。

●ビジョンの重要性

経営者にとってビジョンを明示することは非常に大事なことです。内外に自身の確固たる意志を明示することで、組織への求心力が高まります。加えて、ビジョンは戦略とも直結します。戦略はビジョンと現状のギャップを埋めるために策定するものです。ビジョンがあることにより、長期的な目標に基づき一貫した行動が可能となります。

一方で、ビジョンなき組織は長期にわたる経営が困難です。ビジョンのない事業は推進力がなく、内外の協力を得ることも難しくなります。ビジョンの不在はゴールを認識していないことでもあり、場当たり的な経営になりがちです。つまり、計画経営の条件から外れているといえます。

ビジョンは経営者の描く将来像であり、経営者による強い意志の表明です。そのため、短期的な計画の浮き沈みに一喜一憂することは本質から外れます。経営者は預言者ではありません。現状を十分理解して未来を推測する、そこから行動のための仮説を導くことが大切なのです。以上より、現状分析を十分に意識しながらビジョンを策定する必要があります。

●ビジョンと目標

ビジョンは最終的に目指すゴールです。長期的、抽象的な内容とすることにより、目的をもった経営視野の意思を推し量ることができます。一方で、実現していない未来に対するイメージであり、具体性に欠けるともいえます。

経営はよく山登りに例えられますが、「あの頂上まで行くぞ」という最終的なゴールがなければ登れません。一方でゴールは遠いので、登っているうちに意志が弱くなることもあるでしょう。そのような時、短期的かつ簡単に達成できるものを目指すことで、いつの間にか成果が出ることもあります。

このようにビジョンに期限を定め、段階的に示したものが「目標」です。したがって、目標とビジョンの違いは「期限を設定しているのか、いないのか」ということです。ビジョンは事業の向かうべき方向であるのに対し、期限・期間を明確にした経過地点が目標となります。

ビジネスで何かを成し遂げるためには、ビジョンと目標が必要です。長期的な展望と進行過程を確認できる短期的な目標がビジネスを成功に導きます。

基本的に、ビジョンの設定は経営者が独りで取り組みます。目標については組織的に設定してかまいません。いずれにおいても、客観的な意見を参考にすることが優れたビジョンの第一歩です。ビジョンの策定時には、ぜひ外部の協力機関へご相談ください。

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